原稿の整理方針

“3日前の自分は他人”という言葉は、プログラミングを勉強していた学生時代によく耳にした格言だが、長い文章を書くようになった今も、その言葉を(若干の意味の違いはありながらも)身をもって思い知っている。昨日は「行なう」と書いていたのに、今日になって平気で「行う」と書いていたりするのだ。

眠りから覚める度に私の人格が入れ替わっているのでないとするならば、他に考えられる原因はやはり、拠り所が曖昧であったり、自分で定めたルールを憶えていられなかったりすることなのだろう。

一度定めたルールについて、後から「こちらのほうがいいな」と思って修正すること自体は問題ではなくても、一冊の中でそれが起きてしまうのはよろしくない。そして、作業が後半になればなるほど、全体を修正するのは面倒になっていく。従って、執筆前にある程度の方針を固めておくのは大切だ。

以下は、ここ最近の校正作業で修正した項目や注意点を、個人的な備忘用としてざっくりとまとめたものである。今後はこの方針を基本として文章を書いていくことにする。あくまで個人的な方針なので、一般的に正しいものではないかもしれないし、今後も変更・追加・例外はありうる。

  • 「, (カンマ)」「. (ピリオド)」は「、(読点)」「。(句点)」に統一。
  • バリュー:「エース」「ジャック」などは、地の文では「A」「J」とアルファベット表記に、台詞中ではカナ表記にする。
  • スート:基本的にはカナ表記。スタックの表記ではイニシャル表記(CHSD)を許容。
  • 「Dr.」「Mr.」などは「ドクター」「ミスター」とカナ表記に統一。
    • その本の中での出現回数が少なければ「Dr.」側でも。「Sir.」「Bro.」などが出てくると、カナ表記に統一したほうがよさそう。
  • 外国語の固有名詞のカナ表記については、元の単語間に相当する箇所に「・(中黒)」を入れるのを基本とする(例:top card → トップ・カード)。
    • ただしカタカナ語として一般的に定着していると思われる(筆者基準)ものは中黒を使わずに表記することもある(例:body language → ボディーランゲージ)。いずれにせよ同一単語では統一が必要。
  • 「おこなう」「おこなった」などは「行う」「行った」に統一。
    • 1973(昭和48)年6月に内閣告示された「送り仮名の付け方」に則る。
    • どうしても読み間違いが起きそうな箇所はルビor開くor「行なった」で対応。そうした箇所で「いった」と読ませたい場合にはルビor開く。
  • 「つまむ」は「摘む」にする(「摘まむ」としない)。
    • 「つむ」との読み間違いが起きそうな場所はルビなどで対応。
  • 「すべて」「まったく」は「全て」「全く」に統一。
    • 毎日用語集などに則る。平成22年に常用の読みに組み込まれたので使ってよい。
      • 逆に、常用外は使ってはいけないというわけでもない。常用外の漢字や読みを使う箇所はたくさんある(「憶える」など)し、読みやすさなどの観点から開くこともある。ただし統一は(基本的に)必要。
  • 「~したほうがよい」「~するとよい」などの「よい」は開く(「良い」としない)。 
    • 「~したほうがよい」の「ほう」も開く。 
    • 他に、「~する必要はない」などの「ない」や、「~してほしい」の「ほしい」なども開く。「補助形容詞だから開く」とか文法面からのルール付けもあるが、判断が難しいものもあるので、よく使う表現についてルールを決めておくほうが楽かも。
  • 箇条書きの最後に句点を入れるかどうかを統一する。
    • 個人的には句点は入れたくない派だが、文章だと入れたほうがよさそうだし、単語+補足文章となっている場合も悩ましい。改行して分けてしまうのも手。
  • 書誌情報の書式を統一する。また、邦訳版の書誌情報を併記する場合の書式も統一する。
    • 文章の一部として書くときと、参考文献として書くときとでは少し変えなくてはいけないこともあるので注意。
  • 画像の下に本文が隠れてしまうことがあるので注意。
  • 画像の指定ミスに注意(載せる順序が違う、同じ画像が2か所に載っている、本来載せたい画像と違うものが載っている、向きが違う、図表番号の間違いなど)。